宋常星『太上道徳経講義』(42ー9)
宋常星『太上道徳経講義』(42ー9) 人の教えることを我もまた教えよう。「梁が強ければ、死ぬことはない」と。 古の聖人が、天下に教えを垂れたのは、特に「強いものを避けて弱くあれ」ということであった。「剛」を去って「柔」を用いるのであり、人々をして「冲和の気」をして心を涵養せしめることであった。そうして「謙譲の理」のままに生きることであった。こうした人は「強梁の徒」とすることができよう。ここに強さは自然に化して柔順となる。そうであるから老子は今また自分はこれを教えるとしている。「人に教える」とはこうした意味なのである。つまり「人の教えることを我もまた教えよう」である。ただ、広い天下や後世の人にあっては「柔和の道」が「生の道」であることを知ることなく、あるいは声望に頼り、あるいは強権的なことを行うことが「強梁」であると考える人も居るかもしれない。こうした「強梁」は「死の道」である。そうであるので「梁が強ければ、死ぬことはない」とされている。今の世を憂い、古を思って嘆くばかりである。 〈奥義伝開〉「梁が強ければ、死なない」というのは当時の格言であろう。家の梁が強ければ地震などで倒壊することはないという教えである。これは何事にあっても中心となるものがしっかりしていなければ、その大系は容易に崩壊してしまう、ということである。