道徳武芸研究 八極拳「頂肘」を考える(1)

 道徳武芸研究 八極拳「頂肘」を考える(1)

八極拳といえば始めに出てくる「頂肘」の動作が有名である。ただ肘を高く上げる動きは他の武術では余り見ることのできないものでもある。そうしたこともあって「頂肘」は八極拳を特徴付ける動きともなっている。そして、これは肘打ちであると説明される。しかし攻防の観点から言うなら「頂肘」を肘打ちとすると、余りにも無防備な技であると言わなければならない。攻防を形通りとして、相手に対して横向きになって肘で攻撃をする、ということになるようであるが、それでは体側・脇は大きく空いてしまう。つまり体の後ろも前も共にほぼ無防備で相手の攻撃を容易に許す形になるわけである。そうしたこともあって、実戦での解説となると肘を体の前に上げる形にする、と説明していることもあるようである。この形であれば体側や背中のスキは無くすことができるが、肘打ちは近い間合いでないと使えない。つまり肘打ちをする間合いまで相手に近づく間に容易に反撃を許すことになってしまうわけである。多くの武術で肘打ちはあるが、特別な場合の用法(相手に抱きつかれるなど)とされているのは、通常に用いるには危険が余りに大きいためなのである。


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