道徳武芸研究 八極拳雑感「把子拳」と癩伝説(3)
道徳武芸研究 八極拳雑感「把子拳」と癩伝説(3) 肘打ちが日本で一般に知られるようになったのはキックボクシングがテレビで放送されるようになった1970年代頃からという。肘打ちそのものは猿臂として空手にもあったが、それが試合などで使われることはまず無い。頻繁に見られるようになったのはキックボクシングが初めてであった。それは肘打ちが通常の空手の間合いよりかなり近いところでしか使えないためでもあった。それは日本の柔術でほとんど肘打ちがない理由でもある。柔術は基本は対剣術であるので間合いは比較的遠くなる。それ以外では相手を取り押さえるのにも用いられたが、その場合には関節技は求められるものの肘打ちは必要ではない。ただ中国では「肘法」は一般的であり形意拳では「肘」が七拳(頭、肘、肩、拳、膝、臀、足)の中に入っている。あるいは太極拳では「採、肘、靠、レツ」として明示されている。1970年代のキックボクシング・ブームあたりから「肘打ち」の有効性が広く認識されたのであるが、これが「八極拳最強」のイメージと頂心肘という特徴のある形とも重なって「八極拳=肘打ち」のイメージが「八極拳=最強」伝説と共に形成されて行ったようであるが、八極拳の真の強さは「把子拳」にこそあると見るべきであろう。