道徳武芸研究 日本の鍛錬法を考える〜剣術、柔術、相撲〜(8)

 道徳武芸研究 日本の鍛錬法を考える〜剣術、柔術、相撲〜(8)

相撲の「四股」はもとは「醜(しこ)」で古代の日本では力強いことが「しこ」つまり醜いこととして受け取られており、穏やかなことが美しいと考えれていたようである。基本的に四股は沈身の鍛錬であり、体の安定を得ることを第一とする。それには中心軸が開かれることに加えて、股関節にも「柔軟性」が求められる。この場合の「柔軟性」は股関節の可動域を広げることではなく、沈身を行うことのできること、腰が安定することのできる状況であることを意味している。そのためには足を踏み込む動作に合わせて腰を沈める必要がある。現在の力士は足を高くあげるやりかたをすることが多いようであるが、これでは沈身も中心軸の安定も得られないであろう。四股は基本的には陳家太極拳の金剛搗碓と同じである。一部に四股の秘訣として「足の裏が地面を向いたままで行う」という教えもあったらしいが、まさにそうでなければ沈身は得られないことであろう。こうした沈身の鍛錬は「すり足」にも見ることができる。すり足では地面と足の裏は密着しており、腰を落とす動作もある。つまりその場で行うすり足が四股であり、移動して行う四股がすり足ということである。このように稽古のシステムは総てを関連付けて見なければ本当の姿は分からない。


このブログの人気の投稿

道徳武芸研究 八卦拳の変化と蟷螂拳の分身八肘(8)

道徳武芸研究 改めての「合気」と「発勁」(6)

道徳武芸研究 八卦拳から合気道を考える〜単双換掌と表裏〜(4)