道徳武芸研究 太極拳の「レツ」を考える(1)
道徳武芸研究 太極拳の「レツ」を考える(1) 太極拳は張三豊の頃には十三勢と称していたとされている。十三勢とは「四正、四隅、五歩」によって構成されるシステムの称である。この秘訣を見出したことで張三豊の拳は卓越したものとなった。これを後に王宗岳が出て太極拳と命名したようである。王宗岳の「太極拳論」では十三勢に動静、陰陽のあることが見出されている。それによりこれを「太極拳」としたのであった。そこで四正や四隅、五歩などにも陰陽のような「対の関係」を見ようとする傾向が生まれる。例えば「ホウ、リ、擠、按」であれば「ホウとリ」を「斜め上への崩し」と「斜め下への崩し」と解する。そうなると「擠」は前に推すで、「按」は後に推すとしたいところであるが、後に推すとしたのでは武術的な意味が見出し難い。そこでこれを「片手で推す」のと「両手で推す」として解しようとすることもある。しかし、これも「擠」は両手を使っているではないかとされる。そこで、一方の手を補助としなければならなくなる。「対の関係」としての理論が成り立たなくなるわけである。五歩は「前、後、右眄、左顧、中定」で「前に進む」と「後ろに退く」は「対の関係」である。また「右眄、左顧」は「右への転身」と「左への転身」でこれも「対の関係」である。しかし五歩においても「中定」には「対の関係」を見出すことができない。