道徳武芸研究 八卦掌における「三才式」と「三体式」(中)

 道徳武芸研究 八卦掌における「三才式」と「三体式」(中)

八卦掌では形意拳の三才式や太極拳の無極トウに相当するようなものは見当たらない。それは八卦掌では「静坐」を用いるからである。静坐は武術とは全く関係がないように思われるかもしれないが、軽身功などでも静坐を重要な功法としている。九華派の八卦掌では勿論、居敬窮理学派を称することもあり静坐を重視しているが、これが本来の形であるとしている。孫禄堂の『拳意述真』では、董海川が壁のところで「趺坐静坐」をしていたシーンを記している。「趺坐」とは結跏趺坐のことで足を組んで静坐をしていたということである。壁とあるのは達磨の「面壁九年」で知られるように壁に向かって坐る方法がある。これを見ても八卦掌と静坐の深い関係をうかがうことができるが、また孫錫コンの『八卦拳真伝』においては最後に静坐を詳しく説明している。ただその静坐は千峯先天派の趙避塵から学んだもので八卦掌に伝えられていたものではない。孫は「八卦拳真伝』に「武学道功動静合一概論」なる一章を設けて、八卦拳(武学)と静坐(道功)が一体として修行されなければならないことを述べつつも、また第五章の「道功概論」では「(八卦拳において)道功は失伝して久しい」として、趙避塵から学んだ千峯先天派の静坐を紹介している。こうしたことは八卦拳の真伝をいうのであれば、やはり静坐を欠くことができないという共通認識がその背景にあったことを伺わせている。


このブログの人気の投稿

道徳武芸研究 「合気」の実戦的展開について〜その矛盾と止揚〜(3)

道徳武芸研究 両儀之術と八卦腿〜劉雲樵の「八卦拳」理解〜(2)

道徳武芸研究 八卦拳から合気道を考える〜単双換掌と表裏〜(4)