道徳武芸研究 八卦掌における「三才式」と「三体式」(上)
道徳武芸研究 八卦掌における「三才式」と「三体式」(上)
三才式、三体式は形意拳の練習法であるが、これと同様の過程は中国武術に普遍的に存しているということができうよう。もちろん門派によって「三才式」「三体式」の扱いは同様ではないが、大体において「三才式」は「静」を得て「気」を養う方法であり、「三体式」は「柔」を得て「勁」を養う方法とすることができよう。ちなみに三才式の「三才」は天、人、地であり宇宙全体を象徴する。またこれを人体にとれば上丹田、中丹田、下丹田となる。これに対して「三体」は梢節、中節、根節で、形意拳では「梢節」からの動きを重視する。ためにとりわけ三体式を寝る必要が存することになる。太極拳では無極トウなどとして、ただ立つだけの練法があり、これは形意拳の三才式と変わりがない。しかし太極拳では「三才式」「三体式」を歩法(五歩)の練法としてひとつのシステムの中に入れている。つまり中定、前進、後退、右転、左転である。この中の「中定」が無極トウで、「中」は中庸、「定」は瞑想を意味するので、中庸を得るための瞑想が「中定」ということになる。次いで前進を提手上勢、後退を手揮琵琶、右転は単鞭、左転は左単鞭(これは套路にはない)で練ることになっている。また提手上勢、手揮琵琶は「合」、左右の単鞭は「開」と位置付けられている。このように太極拳では変化を内包した中庸である「中定」から、その展開としての歩法と開合をベースに「三才式」や「三体式」を練るているのである。