道徳武芸研究 站トウ、試力、試声と自衛(中)
站トウについて、王キョウ斎は「基礎練習」としていたわけであるが、実は站トウは簡単な功法ではない。多くの形意拳の指導者は始めから半身の構えを練ることを指導するが、これは少なくとも既に武術の経験がある人でなければ適当であるとはいえない。また初心者にもこうした練習が行われるのは形意拳の三才式と三体式が混同されていることに原因があるとも考えられる。形意拳はフォームのバリエーションを少なくしているので、それぞれの練習の方法と意味をよく理解していないと混乱が生まれることになる。形意拳では三才式を始めに練る。三才式は、膝を少し緩めてただ立つだけのフォームであるがこれを一シュ(火に主の字。禅宗などでは「チュウ」と読ませることもある)行う。一シュは「線香が燃え尽きる時間」とされている。禅宗では20分、あるいは45分くらいとする。始めは三才式を20分くらい立てるようにすると良かろう。そして内的、外的な気の流れを感じるのである。なかなか20分じっとしているのは難しいかもしれないが、一年二年と毎日練習をしていると楽くに立てるようになる。これを大体、三年くらい行う。そして高い姿勢での三体式(半身の構え)を練る。これもあまり無理をして低くしないで高い姿勢で左半身、右半身を繰り返す。また三体式は短い時間で動きを変えないで耐えることが良しとされるが、あまり無理をするのは好ましくない。適度に体勢を入れ替えて「静」が失われないようにしなければならない。心身が「静」を得れば気血の流れが適切になるので「柔」が得られる。そして沈身功が深まり腰も沈んで姿勢が低くなる。これも無理をしないで3年くらいで一応の習熟を見るようにする。形意拳以外では「三体式」のレベルを馬歩、弓歩、虚歩を続けることで練る。これも姿勢を変えて20分くらい練ると良い。