道徳武芸研究 太極拳・秘伝の「採腿」について(1)

 道徳武芸研究 太極拳・秘伝の「採腿」について(1)

陳炎林の『太極拳刀劍桿散手合編』には「採腿」について触れた部分がある(採は足篇の場合もある)。そこでは、この腿法は秘伝であり、太極拳では多用されているとも述べている。これはトウ脚に似た腿法であるが同書の説明には右手で相手を引きつけて、左掌で相手の顔を打つと共に、右足で蹴る技となっている。疑問となるのは、こうした腿法が太極拳の中で「多用」されているか、という点である。蹴り方からすればトウ脚が近いが、それは套路の中で多くは出てこない。ただ重要なことは採腿が踏み込むように蹴るとしていることで、トウ脚のように前に蹴るのとは違っている。拳理からいうと採腿は太極拳の四正四隅の拳訣である「ホウ、リ、擠、按、採、肘、レツ、靠」の中にある「採」にあたるものとされる。あるいは「採」腿があえて足篇にすることがあるのは、この時の「採」が手ではなく足を用いるものであるからであろう。しかし「採」は四出四隅の拳訣では「原理」を示すものであるからあえて「捉える」という行為を手と足に分ける必要はない。ただ採腿では実際のところ「足」の使い方に重点があるのはまちがいのないことではある。


このブログの人気の投稿

道徳武芸研究 「合気」の実戦的展開について〜その矛盾と止揚〜(3)

道徳武芸研究 両儀之術と八卦腿〜劉雲樵の「八卦拳」理解〜(2)

道徳武芸研究 八卦拳から合気道を考える〜単双換掌と表裏〜(4)