道徳武芸研究 『八卦拳真伝』と千峯老人・趙避塵〜武術と静坐〜(8)
道徳武芸研究 『八卦拳真伝』と千峯老人・趙避塵〜武術と静坐〜(8)
意拳を考案した王向斉が道功と武術を統合するものとして考えていたのは「混元トウ」である。これは如何なるものであるのか。『拳学新編』には三つが示されている。その一は、足を60度に開いて立ち、両手を体側に垂らすというものである。その二は馬歩で両手は肩くらいに上げる。その三は前後に足を開いて両手を上げる、とされている。太気拳の立禅は二に、半禅は三に近いと思われる。一方で王向斉の弟子の李見宇は一に近い形を混元トウとしている。そして娘の王玉芳は三で腕を下ろした形をそれと示す。『意拳正軌』では降龍トウ、伏虎トウ、子午トウ、三才トウなどのエッセンスを含んだ究極の形のように紹介しているが、それが三種類もあるというのも困ったものである(後に王は『意拳正軌』の内容を否定したとされる)し、伝承者で違った「混元トウ」があるのも判断に迷うところであろう。これは道功(内)と武術(外)の矛盾をどのように解決しようか王が悩んだ結果であろうと思われる。そうして見れば孫錫コンのように道功は道功で練り、武術は武術で修して結果として自然な統合を得る、とするのが妥当なのかもしれない。現在、意拳では「混元トウ」についてあまり語られることがないのも結局は武術と道功を融合した「混元トウ」を確立することができなかったためであろう。