道徳武芸研究 魂の比礼振りとしての合気道(11)
道徳武芸研究 魂の比礼振りとしての合気道(11)
ちなみに三十四計では「苦肉の計」が出ている。これもよく使われている語であるが『兵法三十六計』では日本での意味とは違って、まさに「苦肉の計」は「転換」をいうもので「仮と真」「真と仮」は容易に転換するものであるとしている。つまり「真の攻撃」は「仮の攻撃」に容易に転ずるのであり、「仮の防御」も「真の防御」へと転換することが可能であると教えているわけである。そしてそのためには「肉を苦しめる」つまり「体を危険な状態において相手の攻撃を誘う」ことが重要であると教えている。これは大東流から養神館のような戦前の合気道の色合いを残すものから合気会へと構えが次第に希薄になっていることに象徴的に現れているということができるであろう。また『兵法三十六計』の特徴に『易』との関連が説かれている。「苦肉の計」では「巽」の「風」が挙げられる。「風」は「呼吸」のことであるから、ここに「呼吸力」のあることが暗示されていると読むことも可能であろう。あたかも「風」のように自在に転換をすることで「捉えられない入り身」をすることの重要性が説かれているわけである。