道徳武芸研究 「道芸」修行試論〜肥田春充の場合〜(1)
道徳武芸研究 「道芸」修行試論〜肥田春充の場合〜(1)
中国武術では「道芸」と「武芸」の区別があるとされる。「武芸」は攻防の一定のパターンを「技」として習得し、それが何時でも再現できるように繰り返し訓練をする。これは他の学習と同じであるから分かりやすい。一方「道芸」では「技」となる「動き」は本来、自己の中にあるものであるから、「技」を学ぶ必要はない、と教える。これは道家の基本的な考え方でもあり神仙道などでもいわれている。つまり導引や静坐などの「方法=技」を覚えるのは「逆修」であると言うのである。「技」を学ぶことは本来的に無為自然の道とは「逆」であるというのである。それでは、どうしてあえて「逆」の修行をしているのか。それは「順」である無為自然に気づくためという。周りがすべて白だけであれば、それが「白」であると気づくことはできない。そこであえて「黒」の一点を落とすことで「白」を気づかせる、それが「逆修」であるとされている。「道芸」において「技」を学ぶのは本来、自己の内にある技に気づくためなのである。