道徳武芸研究 両儀之術と八卦腿〜劉雲樵の「八卦拳」理解〜(5)
道徳武芸研究 両儀之術と八卦腿〜劉雲樵の「八卦拳」理解〜(5)
両儀之術は植芝盛平のいう「呼吸力」を練るものである。これは形意拳の劈拳も同様である。劈拳は五行の「金」であり、それは「肺」にあたる。これを上下の動きである「起落」によって行うことで自然に吸息、吐息を練ることが可能となる。呼吸力は中国では「真息」であるとか「胎息」であると言われて来た。それは人が本来、持っている呼吸の状態であるとされている。ヨーガでも呼吸法はよく練習されるが、注意しなければならないことはヨーガの練法では「呼吸法や体位法が最終段階ではない」という点である。ヨーガでは呼吸法に習熟することを目的とはしていない。呼吸法はあくまで瞑想のための補助であって、瞑想が完成した時の呼吸こそが重要なのである。極論すればヨーガでは一旦、成就点とは反対のことをして、その結果として成就点を見出そうとしている。それは白い紙に一点の黒を落とすことで白さを認識しようとするのと同じである。あえて無理な呼吸法をヨーガで行うのはそうしたシステムであるためである。