道徳武芸研究 両儀之術と八卦腿〜劉雲樵の「八卦拳」理解〜(1)
道徳武芸研究 両儀之術と八卦腿〜劉雲樵の「八卦拳」理解〜(1)
劉雲樵は宮宝田から学んだ八卦「拳」を八卦「掌」として教えていた。それは元の八卦拳からの変更があったためと思われる。台湾には宮宝田から八卦拳の教えを受けていた兄弟子の宮宝斎が居も居たので、それと異なる内容を八卦「拳」として教授することには遠慮があったものと思われる。劉の八卦「掌」は当時の八卦掌関係の資料をも参考にして八卦「掌」として新たに八卦「拳」を再編成したものであった。ちなみにかつては八卦掌関係の資料はひじょうに乏しく香港の系統に依拠した韓寿堂の『八卦拳』や形意拳の系統の姜容樵の『八卦掌』、孫禄堂の『八卦拳』それに程派の八卦掌を伝える孫錫コンの『八卦拳真伝』などが比較的容易に入手できるに過ぎなかった。劉の八卦掌では基本の構えを「倚馬問路」とするが、これは姜容樵の本に出てくるもので、套路の中での呼称であり、他では基本の構えにそうした言い方を取ることはしない。そうしたところをしても劉が八卦拳をそのまま踏襲していないのは明らかである。