道徳武芸研究 形意五行拳における「土」について(4)

 道徳武芸研究 形意五行拳における「土」について(4)

形意拳のシステムから五行を考えるならば「土」は三体式とならなければならない。三体式は鷹捉を練るものであるが、これは形意拳の根本である。三体式の変化として劈拳や讃拳がある。また横拳もそうである。横拳が「横勁」を練るものとされるのは本来の形意拳のシステムである「老三拳」によるものである。つまり劈拳、讃拳、横拳は「老三拳」なのであり「老三拳」は三体式の変化なのである。ちなみに老三拳は「践、鑽、裹」で、踏み込み(践)の歩法を強調した形が劈拳、力の集中(鑽)を強調したのが讃拳(鑽拳と書くこともある)で、丸く力を使う(裹)のが横拳である。本来、横拳は「老三拳」として三体式の変化の中にあるものであった。これに姫際可が槍の技術を取り入れたことから崩拳、砲拳が編み出された。ここに鷹捉をベースとする「老三拳」と槍術に由来する崩拳、砲拳で五つの拳が揃うことになって五行思想と結び付けられるようになるわけである。その結果、三体式と「五行拳」がシステム上、分離してしまい、結果として「土」の拳である横拳の位置が不明確となって行くことになる。さらに八卦掌が取り入れられると横拳は「土用」のように「変化」を練るものと考えられるようになって大きく腕を横に振る形意拳としては特異な形に変化して行くのである。結果として今の形意拳には「土」が二つあることになり、五行の「相生」としての三体式と「土用」の変化を示す横拳とが併存する形になってしまっている。これをシステム的にいうなら古い形の横拳は「老三拳」につながる「相生」に属しており、新しい横拳は「土用」の変化につらなる八卦掌・滾勁であるということになる。


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