道徳武芸研究 鄭子太極拳起式六変と合気上げ(2)
道徳武芸研究 鄭子太極拳起式六変と合気上げ(2)
鄭曼青のいう六変は起式という腕を上下させるだけの運動において示される。先ず腕の重さを感じて腕を肩の高さまで上げる(一変)。そして手首の力を抜く(二変)、次いで肩の力を抜き(三変)、肘の力を抜く(四変)。さらには腕全体の重さを感じて腕を下ろす(六変)。これが六変である。そして、いろいろな動作を用いて気を上下させるのが太極拳であるということになる。「捨己従人」とは通常は先入観を持たないで相手の意図することを理解しようとする、という意味で使われる。武術的には相手と一体となるということであり、これはまさに「合気」そのものであるといえよう。こうして太極拳では相手と一体となって(粘)、相手の力を変化させて(化)、コントロールする(走)に導くのである。そうした合気とコントロールを含めて植芝盛平は「引力」と称していた。「合気道は引力の鍛錬である」と教えていたのである。言うまでもないことであるが、六変は太極拳の最後の「合太極」でも行われている。ちなみに起式を「開太極」という場合もある。「太極を開く」と「太極に合う」である。これは太極拳が太極拳の一連の動作行うことで上昇、下降する気の流れ(周天)が整うことを意味しており、その流れは天の日月、星々の周天と流れを等しくすると考えるわけである。