道徳武芸研究 鄭子太極拳起式六変と合気上げ(1)
道徳武芸研究 鄭子太極拳起式六変と合気上げ(1)
鄭曼青は起式に六段階の変化があるとして、特にそれを「六変」と名付けて重要性に注意を促している。何故、この六変が重要かといえば、それが太極拳で最も重視される「捨(舎)己従人」を実現する方法であるからに他ならない。鄭曼青は太極拳修行の第一に「捨己」を挙げている程である。この「捨己従人」はひとつには「己を捨てて人に従う」であり、もうひとつには「己を捨てて人を従える」でもあるが、これらにおいて重要な鍵となるのが「捨己」なのである。六変はこの「捨己」の方法を具体的に説明したものに他ならない。よく「太極拳は一気の昇降」であるともされる。つまり太極拳のいろいろな動作は全て気の上昇と下降で尽きているというのである。これは仙道では「周天」とされていることである。つまり「太極拳は一気の昇降」であるとするならば、起式の六変はまさにそれだけで太極拳の全てを示すものということも可能なのである。