宋常星『太上道徳経講義』(54ー2)
宋常星『太上道徳経講義』(54ー2)
建築において「善」を実行すれば、建物が崩れるようなことはない。
「善」とは最も適切であるということである。建築とは建物を建てることである。建物が崩れてしまうと建物は無くなってしまう。それと同じく自分が「善」の立場にあれば、それは自然のままなのであるから天地はそれを崩すことはできない。鬼神もどうすることもできず、陰陽の変転にあってもそれが崩されることはない。あらゆる存在がそれを犯すことはできず、それは至堅、至固なるものといえる。またそれは変わることのない至常であり、至久なのである。そうであるから「善」をして建物を建てれば、それが崩壊することはないのである。そうしたことを「建築において『善』を実行すれば、建物が崩れるようなことはない」と述べている。
〈奥義伝開〉建物が崩れないというのは「不抜」という言い方がされている。これは太極拳でいう「抜根」の「根」と同じで「安定の基礎」ということである。これを武術的にいえば「根」は重心のことで、重心を崩すのが「抜根」である。太極拳はまず「抜根」を行い相手をコントロールしようとする。それはつまりは「善」の実行、つまり「道」を行うことであり、自然のあるべきを為すことなのである。建物も自然のままに無理のない建て方をしていれば崩壊することはないわけである。