道徳武芸研究 「御信用之手」と「御式内」そして「引進落空」(1)

 道徳武芸研究 「御信用之手」と「御式内」そして「引進落空」(1)

大東流では「御信用之手」や「御式内」といった日本語として他に見ることのできない用語が使われている。また大東流は西郷頼母が武田惣角に伝授した時には「大東流柔術」とされていたが後には「大東流合気柔術」と呼ぶようになった。これも一般的な柔術というカテゴリーからすれば特異な名称といえる。近世に発達した柔術は柔道の源流になった起倒流柔術などのように流儀の名の後に柔術を付すのが通例である。また柔道は天神真楊流柔術からも影響を受けているが、天神真楊流は真楊流柔術に天啓を得てイノベーションを加えたもので、そうした場合には「天神」のように本来の名の前に付することが多い。もし大東流柔術に合気を加えることを思いついたのであれば合気大東流柔術とでもする方が妥当といえよう。つまり「合気柔術」とした場合には合気は柔術を修飾することになるので、それは単なる「柔術」ではない新しいカテゴリーを生み出したことになってしまう。しかし、あくまで大東流が柔術の範囲に内包されるものであることは言うまでもあるまい。ただ「合気柔術」としなければならなかったことには必然的な理由もあると思われるので、それに付いては後に考察を加えることとする。


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