道徳武芸研究 改めての「合気」と「発勁」(1)

 道徳武芸研究 改めての「合気」と「発勁」(1)

かつて日本の武術には「合気」があり、中国武術には「発勁」があるとされていた。この場合の「合気」とは「主として腕の操作により相手のバランスを失わせて動けなくさせるもの」であった。一方で「発勁」は「短い距離から有効な突きを発するもの」とされていた。そしてこれらは日本あるいは中国の武術を特徴付けるものとして知られるようになって行ったわけである。「発勁」については古くはブルース・リーが「ワンインチパンチ」として、中国武術の優位性を示すパフォーマンスとして見せていたこともある。また日本の武術に独特のものとされる「合気」も太極拳の「化」や「走」「粘」などがそれと同じなのではないかとする見方もあったし、「発勁」でも空手やボクシングをやっている人の中から「寸勁(ワンインチパンチ)」と似たことは可能である、とする見解も提示されていた。加えて日本の武術で「合気」は普遍的に使われているわけではない。それに「発勁」についても、この言い方は主として北方の武術で使われるもので、中国武術全体では「発力」などと称されることも少なくない。厳密に考えれば「合気」と「発勁」をして日中の武術を代表する概念とするには、やや早急であったようにも今にしては思わないではいられない。


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