道徳武芸研究 植芝盛平の神秘体験(1)
道徳武芸研究 植芝盛平の神秘体験(1)
植芝盛平は大本教に居た頃に「黄金体化」とされる神秘体験をした。合気会ではそれを合気道の生まれた時とする。この神秘体験は天地から黄金の息吹が吹き出して盛平は、それに包まれ自身が黄金体と化し¥たという。そしてその時に「我即宇宙」「万有愛護」を感得した。カッパ・ブックスの『合気道入門』(植芝吉祥丸)では、この「体験」をウパニシャッドの悟り体験を引いて解説している。本来、仏像は金色であり、それはまさに「黄金体化」をしているわけで、インドでは黄金の光に包まれるのは悟りを開いた時であるとする考え方があったようである。つまり、この盛平の体験も言うならば「究極の悟り体験」であったわけである。空海は求聞持法を修して明星と一体化する神秘体験をしたが、これは釈迦が悟りを開いたのと同じ体験であった。これにより空海は密教を信ずるようになった。また道元は「心身脱落」の神秘体験をして、これは釈迦の体験とは違うが、道元はこれこそが真の悟り体験であると、ひたすら「正法眼蔵」を書き綴って證明しようとした。「身心脱落」の体験が悟り体験であると考えるのは道元以外には無いので、道元はいろいろな解釈の可能性を模索したわけで、そのために「正法眼蔵」は難解となった。本来は通らない道理を通そうとするから難しくなるのは当然であると言えよう。