道徳武芸研究 「抜き合気」と五行掌〜束と縮〜(7)
道徳武芸研究 「抜き合気」と五行掌〜束と縮〜(7)
先に触れたが形意拳の「束」のように体幹を鍛える方法に八卦掌の「縮」がある。これも力を体の中心軸に集めるイメージのある「縮」が拳缺としてある。八卦掌では「縮」と「伸」、形意拳では「束」と「展」として体幹を使っての力の出し方の重要性が説かれている。日本ではよく「手ほどき」という語が柔術の稽古などで用いられ、強く掴まれた手を外すことが柔術練習の第一歩と見なされていたが、これは体幹が出来ているかどうかを見ていたのである。かつて台湾の公園で練習していると、半年に一回くらい「手を取らせてください」とか「手を取ってみなさい」と声を掛けられることがあった。大体、同年くらいであれば「手を取らせてください」と言われ、年配者は「手を取ってみなさい」と言って来たように思う。「手を取らせて」というのは相手の実力を見たいという意図であり、「手を取って」というのは外し方を見せるから何かを学びなさいということのようであった。当時は随分、煩わしいと思っていたが、これらはひとつの修練、学びの場であることに後に気がついた。