道徳武芸研究 易と太極拳(5)

 道徳武芸研究 易と太極拳(5)

おおよそ易は陰陽を記号で示す「卦」と、卦のひとつひとつの陰陽をに付された「爻辞」とで構成されている。これに後に儒教的な解説としての「伝」が付されて、儒教の経典としての『易経』が成立する。易の全体を見ると、おそらく「卦」と「爻辞」は全く別に成立していたのではないかと思われる。「卦」は陰陽をして森羅万象は成り立っているとする宇宙観で、これは五行思想などと同じようなものである。一方「爻辞」は甲骨文などと文体も似ており、おそらくは占いの「結果」つまり神託を集めて編集したものと思われる。本来は問いかけの文があって、「爻辞」のような「結果=神託」が存していたのであろうが、問いかけのところはなくなり、「神託」の部分だけが残されたのであろう。それは「神託」が格言的な一種の普遍性を有する言辞と見なされていたからであると思われる。また易が成立するには卦と爻辞が繋がらなければならないので「象」という解説が付されている。本来、ひとつにならない卦と爻辞を繋ぐ努力は後々にも延々となされることになる。


このブログの人気の投稿

道徳武芸研究 「合気」の実戦的展開について〜その矛盾と止揚〜(3)

道徳武芸研究 両儀之術と八卦腿〜劉雲樵の「八卦拳」理解〜(2)

道徳武芸研究 八卦拳から合気道を考える〜単双換掌と表裏〜(4)