道徳武芸研究 なぜ太極拳には砲捶が無いのか(1)
道徳武芸研究 なぜ太極拳には砲捶が無いのか(1)
一般的に中国武術は基本である「母拳」と応用である「砲捶」とで構成されている。またこれらは死套路、活套路などと称されることもある。ただ太極拳に砲捶の存在を見ることはできない。ちなみに陳家太極拳には砲捶があるが、陳家太極拳は理論的には太極拳そのものではなく、その基本は通臂拳にある。通臂拳の理論を陳一族が独自に変化発展させたのが陳家太極拳である。太極拳は何度か陳家溝に入っていたようであるが、陳長興の時には太極拳によって大きな変革が陳家の拳である「砲捶」にもたらされた。陳長興は陳家の砲捶の基本となる套路を考案したのである。これが一路で、陳家の砲捶は新しく太極拳の影響を受けて考案された一路と従来の砲捶である二路により構成されるようになる。その後に楊露禅が北京で太極拳を広めるようになると陳品三などが楊露禅の「太極拳の源流」を名乗って陳家の砲捶を太極拳と唱えるようになった。本来は陳一族の拳ではなかった太極拳であるが、それが北京を中心に広く知られるようになったことで、逆に自らの拳を太極拳と称するようになったのである。