道徳武芸研究 ピラミッドパワーと形意三才式(1)
道徳武芸研究 ピラミッドパワーと形意三才式(1)
ピラミッドパワーと聞いて「!」と思った方は50歳以上ではなかろうか。日本でピラミッドパワーのブームがあったのは1980年前後あたりであった。それはピラミッドの形が空間に潜在する特殊なエネルギーを使うことのできるものであるとする疑似科学に依るものであった。例えば四角錐に組んだ枠の中にリンゴなどを入れておくと、そばに置いたリンゴは腐敗しても、中に置いていあるものは乾燥してミイラ化するというような「実験」が、テレビなどを通してよく見せられれていた。他には切れない刃物がピラミッドの中に置くと切れるようになった、などおよそ真実味のない話が「実しやかに」語られていたのであった。熱心な人の中にはピラミッドの形に棒を組んで、その中で瞑想している人も居たし、そうしたグッズも売られていた。今、考えると全くの似非科学で取るに足りないことのように思われるが、それがかなりの熱量をもって受け入れられていたことは横尾忠則の『我が坐禅修行記』(1978年)などでも見ることができる。