道徳武芸研究 太極拳秘伝「採腿」と柔道「山嵐」(1)
道徳武芸研究 太極拳秘伝「採腿」と柔道「山嵐」(1)
山嵐は講道館で西郷四郎が使って無敵であったとされる技であるが、現在は試合などで用いられることはなく「幻の技」などと称される(しかし一応は講道館の「形」として認められてはいる)。これが西郷頼母から伝えられた「合気」を使った技ではないかといわれているのであるが、そこで注目すべきなのは、前の稿でも言及したように四郎の足が一旦、相手の体に触れるとけっして離れることがなかった、とされている点であろう。富田常雄は『柔道創世記』の中で「相手の足首にかけると、それが予定の位置をはずれて、上の方に流れると云う様な事がない」であるとか「相手の踝を目的とすれば、そこにぴたりと喰いついているのであった」などと記している。これはまさに「合気」によるものでこうした手以外の部位によって掛けられる合気は「体の合気」などと称されることもある。ただ足の裏を相手の足に密着させるやり方は柔道的な動きの中では難しいようで、現在実演される「山嵐」の多くの場合はただ相手の足を払うだけになっている。