道徳武芸研究 新羅明神と御信用之手、合気上げ(3)
道徳武芸研究 新羅明神と御信用之手、合気上げ(3)
そこで新羅明神である。この神蔵は左手は軽く拳にして腰のあたりに置き、右手は胸のあたりでこれも軽く拳にして手を水平にしている。これは合気からいえば相手を引き付け(合気を掛け)て、右手を上げ相手の腕の内側から、手を返して右方向へと崩した形になる。興味深いことに像は手に何も持っていないが、絵では右手には巻物、左手は錫杖を持たせている。厳密に調べたわけではないが、絵は比較的公開されているのに対して、像は「秘仏」としている場合が多いように思われる。そうしたところからすれば、新羅明神にあえて巻物や錫杖を持たせているのは、それが合気の手を示しているものであることを知らせないようにするためではなかったかと思われるのである。その証拠に像の場合に錫杖は別にあつらえなければならないかもしれないが、巻物は像と一体として彫り込むことも可能であるのに、一体として手と巻物がひとつに彫られたものがないようなのである。こうしたところからすれば、源義光は新羅明神によって象徴される御信用之手(合気)を授けられたために新羅三郎と称するようになったのであり、それを大東流では実質的な流祖として位置つけていると考えられるのである。