道徳武芸研究 合気道と物部神道〜秘儀の系譜「振魂」〜(1)
道徳武芸研究 合気道と物部神道〜秘儀の系譜「振魂」〜(1)
合気道の準備運動のようにして行われている「振魂(ふるたま)」については、前回の天の鳥船への考察を加えたところでも触れておいたが、「ふるたま」あるいは「たまふり」は古代から見られるものであり、天の鳥船のように新しく作られた語ではない。古代において「ふるたま」あるいは「たまふり」とされたのは人の霊魂を活性化させる方法であった。実のところこうした方法には二通りがあって、ひとつには「ふるたま」のように動かすことで衰えている霊魂に再び活力を与えようとする方法であり、もうひとつには「たましずめ」として霊魂の活動が衰えるのは霊魂が体から遊離するからであると考えて、それを鎮めようとするものがあった。現在は「ふるたま」や「たまふり」も「鎮魂」の読み方のひとつとされているが、「鎮魂」を普通に読めば「たましずめ」と読まなければならない。つまり、こうした漢字の選択の経緯からすれば古代の日本では「たましずめ」と「たまふり」の二つの系統があったものの最終的には「たましずめ」が「鎮魂」の方法として選ばれたことを知ることができるのであり、その失われた「ふるたま」こそが物部神道の系譜につらなるものと考えられることは以下に述べる如くである。