道徳武芸研究 通臂功としての天の鳥船(6)
道徳武芸研究 通臂功としての天の鳥船(6)
天の鳥船で両手を出すのは肩甲骨を開くという重要な意味がある。また両手を引くことで肩甲骨を合わせるようにすることも重要である。これに加えて腰の回転と重心の前後への移動が一致すれば大きな力を発することができる体作りの鍛錬が可能となる。また呼吸は腕を出した時に吐くのが良い。現在は「えっさ!えっさ!」と船を漕ぐニュアンスの声を出している(川面式がそうであったので)が、これは適当ではない。こうしたところは感覚的な選択の限界でもある。植芝盛平の身体感覚を通した時、川面式の天の鳥船に鍛錬法として重要な動きの含まれていることは直感されたのであろうが、それがどうしてそう認識されたか、までは詰めて考えられることがなかったので、それにおける合気道においての必然性を説くことができなかったわけである。結果としてそうしたもの(盛平が神道やいろいろな行法から直感的に取り入れた教え)の多くが有効に活用されることはなく、ただ形式的に踏襲されるか、次第に行われなくなっているかしているようなのである。ちなみに両手を出す動きは形意拳の十二形拳にも多く見ることができる。それは十二形が優れた鍛錬法の集大成である所以(ゆえん)でもある。