道徳武芸研究 通臂功としての天の鳥船(5)
道徳武芸研究 通臂功としての天の鳥船(5)
たとえば振魂は剣を上下に振って中心軸を感じた上で、それを緩めるというところに効果があるのであってむやみに手を握って振っても意味はないし、特段の効果も得られない。現在の合気道の練習において振魂を行なう必然性が感じられないのは当然というばそうなのである。また天の鳥船も同様で、これが肩甲骨を開き、腰の動きと重心の移動を一致させるものとして練習されなければ、武道的には意味のない運動となってしまう。太極拳には按という両手で前を押す動作が多いが、これは両手を前に押すことで肩甲骨を開こうとしているのであり、この状態が「含胸抜背」となっている。「含胸抜背中」は力を発する(発勁)の秘訣とされているが、全身(主に腰と背中)を使って生み出した力を腕に伝えるには胸を緩めて、背中に力を通すようにすることが求められるわけである。もちろんこれに慣れれば片手で打っても力を集中させることが可能であり、その典型は野球の投手の動きである。投手は大きく振りかぶって胸を開いて、体を折って背中を伸ばして球を投げている。これは最も効率的な体の使い方なのであり、「含胸抜背」はそのことを教えているのである。