道徳武芸研究 九華派八卦掌 坤卦解(7)

 道徳武芸研究 九華派八卦掌 坤卦解(7)

坤卦では「永貞(えいてい)に利あり」とも教えている。この「永貞」とはまた「柔順利貞」ともあるように具体的には「柔順」を得ていることをいうのであり、それはさらには「先んずれば迷いて道を失い、後るれば順って常を得る」とも説明されている。つまり相手より早く動こうとすると「道」が失われるのであって、相手より後れて動くこと、つまり「順」であることが「常」なる「道」を得ることになるというのである。これはまったく太極拳でいう「舎己従人」と同じであるとすることができる。この拳訣は「己を捨(舎)てて人に従う」と「己を捨てて人を従う」の二つの意味がある。つまり「己を舎てる」ことで相手の動きを完全に把握して「順」となり、それを行うことで相手をコントロールすることも可能であると、この拳訣は教えている。「常」なる「道」とはこの場合には「常に相手の攻撃を制することのできる方法「(道)」ということになる。また別の拳訣では「合えばすなわち出る」(打手歌)とも教える。「合」が「己を舎てる」ということで、それと同時にこちらが積極的に相手をコントロールする(出)ようにしなければならないという攻防の間合いを示しているわけである。ちなみに「舎己従人」は一般的な諺としては「(相手の考えていることを正しく知るには)自分の考えを一旦、捨てて相手のいうことを聞かなければならない」という意味で、これが太極拳の拳訣として転用されているわけである。日本でいうなら「合気」となるが、これは打手歌の「合」えば、とするニュアンスに近いといえるであろう。


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