道徳武芸研究 九華派八卦掌 坤卦解(5)
道徳武芸研究 九華派八卦掌 坤卦解(5)
さて坤卦に「習わざれば、利ならざるなし」とあることは前回に紹介しておいたが、その一文の前には「直、方は大(すぐ)る」ともある。つまり直線的であったり、四角であったりするものを「大(すぐ)」れたものとしているわけである。これを武術でいうなら四角は安定であり、直は力の集中ということになろう。中国では天円地方という世界観があるので、「方」は地を意味する。つまり気が地に落ちている安定している状態を「方」は示していると見ることが可能なのである。「体が浮いていいない」ような状態はあらゆる高い運動能力を有するアスリートに普遍的に見られるものであり、武術ではこうした状態を「沈身」や「沈墜勁」などと称している。太極拳では「曲中求直(曲れる中に直を求める)」の拳訣があるが、そこで言われている「直」が重要であることを坤卦でも教えていることが分かる。また「曲」は曲がっている、つまり螺旋が作る円形であり、先に触れた天円地方でいうなら「天」となる。つまり天=乾卦で教えていた心の自由さをいっているわけである。こうして見ると「曲中求直」が、ただ「曲線の動きの中に真っ直ぐな動きを求める」というだけのものではないことが分かる。つまり「曲中求直」は先天の中に後天の動きを求めるという意味が奥義としてあることを知らなければならない。