道徳武芸研究 九華派八卦掌 坤卦解(4)
道徳武芸研究 九華派八卦掌 坤卦解(4)
さて「易」の全体の解説はここまでとして、ここでの本来のテーマである「坤卦」についての説明に移ろうと思う。すでに述べたように乾坤は「先天の両儀」つまり「虚」の存在であるために、その働きが直接、具体的なものとして現れることはないが、それは未出現の「原理」として存在している。乾坤つまり天地の循環は「水」をもってイメージされる。池や川など地にある「水」は天の太陽の熱などで、熱せれれると水蒸気になり、天へと至るが、冷やされると雲になる。雲はさらに雨となって地上へと水を戻すことになる。このような循環がイメージされていたのであり、坤卦でも「霜を履(ふ)む」とか「堅氷至(いた)る」と水に関するイメージが見られる。つまり液体から気体、粗大なものか微細なものへと変じた「水」が再び固体となることをいっているわけである。微細な感覚が開けて自由な心の働きを得ることを乾卦では教えていたが、坤卦ではそれはまた技という形を持つことがなければならないとするのである。こうしたことを「習わざれば、利ならざるなし」としている。つまりただ自由な心の働きがあるだけでは「利」を得ることはできないのであって、武術であれば適切な動きを学ばなければ、習わなければ不利であると教えているのである。