道徳武芸研究 形意拳の五行説(2)
道徳武芸研究 形意拳の五行説(2)
劈拳は呼吸を練るものであるから、これを「木」として「肺」に当てている。呼吸とは「フン」と「ハアー」である。劈拳は二つの動作から成っているが、始めの拳を突き出す動作が「フン」、掌で打つのが「ハアー」となる。形意拳の拳訣では「起落」とされるものである。これを一連の動作として練る場合には拳を挙げる時に吸って、掌を打ち下ろす時に「ハアー」と吐く。劈拳は形意拳の根本をなすものであり、システム上からすればこれを五行の中心である「土」としなければならないが、形意拳における五行説は、そのシステムを説明するために用いられているのではなく、あくまで拳訣との関係を示すものであるから、システム上は中核となる劈拳であるが、それを「土」とするのではなく「金」にあてている。次の讃拳は「水」で「腎」とするが、これは「腰をやや後ろに引く」という拳訣によっており、そうであるからこの動作は「腎を意識して」とすることができる。よく問題となるのは讃拳の拳の出し方で「突き上げるように出す」とするものと「口から吐き出すように前に打つ」とするものとがある。これは「腎」で腰を引くその動きとバランスをとる形で拳が出されなければならない。そうであるから突き上げるのでも、突き出すのでもなく、腰との関係によって動きが決まるのであって、個々人の腰の位置が体全体とどのような関係にあるかによって決まるものとされている。