道徳武芸研究 形意拳、八卦拳で「心」を開く(1)
道徳武芸研究 形意拳、八卦拳で「心」を開く(1)
門派として構成されているシステムにおいて最も重要とされるのは「母拳」である。形意拳では五行拳が、八卦拳では八母掌が「母拳」とされる。ために姜容樵には『形意母拳』なる著作があり、五行拳を解説している。こうした母拳において興味深いのは、これらにはその門派における身体観が示されている点である。ちなみに五行拳では劈拳が金で肺を、讃拳が水で腎、崩拳が木で肝、砲拳が火で心を開くものとしている。横拳は土であり五行思想ではこれを脾に当てるが、形意拳では肺、腎、肝、心の働きを整えるものと考えることが多いように思う。また八卦拳では内的な身体と外的な身体に分けて、内的な身体を内四掌(心、肺、肝、腎)で開き、外的な身体は外四掌(頭、胸、腹、腰)で開くとする。八卦拳では内的な身体と外的な身体を別に開くシステムとなっているのであるが、形意拳では内的な身体を練れば自ずから外的な身体も開かれると考える。こうした身体観において興味深いのは形意拳が「肺」を第一として、八卦拳が「心」を第一とすることであろう。こうした違いはどうしたところから生じているのであろうか。