道徳武芸研究 太極拳の「レツ」を考える(5)
道徳武芸研究 太極拳の「レツ」を考える(5)
四隅の「レツ」は両手を連動させて使う秘訣である。一般的な武術では左右の手をそれぞれ別に使っている。左で受けて、右で突くというような使い方である。例えば太極拳の提手上勢では右手で相手の攻撃を受け流して(下への勢)、左手で相手を崩して攻撃をしている(上への勢)。手揮琵琶ではこれと左右の働きが反対になる。右手が下への勢であり、左手は上への勢となっている。これらは攻防において相手の動きを絡めるうようにして捉えるための力の使い方であり、これは太極拳ではまた「粘」と称されるものでもある。中国武術では双剣や双刀に見られるように両手を使う練法が広く存している。ブルース・リーで有名になったヌンチャク(双節棍)は、三節棍の変形であり、三節棍は両手で使う(双節棍も同じ)。本来、双節、三節棍は「棍」とあるように棍を2つまたは3つに切断した武器なのである。これを伸ばせば棍としても使うことができるし、節で分けて使えば短棍として、或いはチェーンのようにも使える。このように両手を使う目的はひとえに多くの変化を生じさせるために他ならないのである。