外伝10孫禄堂の「道芸」研究(43)

 外伝10孫禄堂の「道芸」研究(43)

収進懐裏(上歩七星学)

「収進懐裏(収と進は懐の裏〈うち〉)」は、十字に合わせた手の動きの拳訣で、「収」と「進」は一見して相反するようであるが、これらの勢はすべて懐の内にあると教えている。これを細かに言うなら「収」は手の動きで、「進」は体の勢となる。楊家では上歩七星と次の退歩跨虎は一連の技であるとされ、両手は前に推して、腰を引くことで次の動きの下がる勢を生じさせる。相反する勢が上歩七星に含まれていることには変わりはないが、孫家では次の下歩跨虎と特別な関係にあるという構成にはなっていない。上歩七星学だけで両腕で丸い勁の勢を作ろうとする。この拳訣は五行拳にも当てはまる。十二形拳では馬形拳や虎形拳などにも共通している。「収」とは相手の勢を吸い取るような感じで「合気」の働きとしても良い。五行拳は通常の拳術のようにただ突くのではなく、触れた腕で相手の勢を受けて吸収して、前に進む勢(跟歩)によって攻撃の勢を得るのである。


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