外伝10孫禄堂の「道芸」研究(33)
外伝10孫禄堂の「道芸」研究(33)
気要下沈(右左起脚学、転身テキ脚学)
孫家の場合は両掌を開くのと同時に足を上げる。これは楊家や呉家が初めに手を開いてから蹴るのと大きく違っている。この間合いは手を「開」とする勢に乗じて、足も「開」となる形といえよう。これに対して楊家などでは先に手を開くことで、体に溜めを作って、それを開放することで足を上げる。ただどちらにおいてもこの時に気が浮いてはならない。一方、少林拳でも同様の蹴りは多用されるが、これはむしろ気を上げることで蹴りを放つ。気を沈めるのは転身をして蹴りを放つ転身テキ脚でも同様であるとされる。こうした少林拳と太極拳の違いが、ひじょうに明確になるのが転身テキ脚を大きくした飛んで回し蹴りを放つ旋風脚であろう。これは少林拳では体を伸び上げるようにして気を上げて蹴る。一方で八卦拳などではむしろ体を沈めるようにする。中国武術には同じような動きでも内的な心身の操作がまったく反対となるものもあるので注意を要する。