外伝10孫禄堂の「道芸」研究(20)
外伝10孫禄堂の「道芸」研究(20)
一気撤回(如封似閉学)
如封似閉は左右に掌を開くのと同時に一歩下がるが、楊家などでは歩法を用いることはない。その意味で孫家は手と歩の協調が難しいために、ここで一気撤回の拳訣を示しているのであろう。この技は両手の間隔、下がる幅などが完全に一致していないと完成しない。こうした動きの間合いについて孫禄堂は船に立っていて、顔は西を向いているが、船は東に動いている感じであるとする。つまり「意=顔」と「動作=船」とが逆になっているということである。逆であるが協調して動いていなければならない。意も動作も共に前に出れば逆手のようにあいてを封じることができるであろう。また共に下がれば相手の攻撃を断つことができる(閉)であろうが、封じるでもなく、断つでもなく、また封じ断っているというところに太極拳の妙であり醍醐味があるといえる(これには返し技をさせないという意図もある)。