外伝10孫禄堂の「道芸」研究(17)
外伝10孫禄堂の「道芸」研究(17)
神気穏住(手揮琵琶学)
「神気穏住」とは神(意識)と気(動作)が一定の安定を得ている状態をいう。穏やかに安定しているといっても、その中には動きが暗蔵(外には現れていないが、内には確実に存している)されている。これを孫禄堂は「周身軽霊」としている。全身軽やかに動き得る状態に手揮琵琶はあるのである。孫家はつま先を付ける形となり蓄勁の色彩が強いが、楊家では踵を付けて、体の勢いとしては下がりながら、前に出ようとする勢いを歩法に含ませている。動こうとする勢いを内に秘めて見せず、すぐに動ける状態にあるためには「不偏不委倚」でなければならない。これは真っ直ぐに立っているということである。また孫禄堂は「懸空」の語をして「不偏不倚」を例えているが、太極拳では同じことを「頂頭懸」とする。これは頭の頂きを糸で吊られているような感じとされる。つまり「頂頭懸」であれ「周身軽霊」であり、それは「神気穏住」の状態になって初めて得られるものなのである。