外伝10孫禄堂の「道芸」研究(9)
外伝10孫禄堂の「道芸」研究(9)
「腹内虚空」(懶扎衣学)
それでは孫禄堂の『太極拳学』を見てみることとしよう。初めは懶扎衣学にある「腹内虚空」である。これには「鬆浄」のことであるとの注がついている。つまり腹内虚空とは腹内鬆浄と同じであるということになる。八卦拳では胸、足心、掌心が「空」であるとするが、腹が虚であるとはしない。『太極拳学』には腹内虚空に続いて次のような注が見られる。それは「古人云う。腹内鬆浄たれば気騰然す。尾閭正中たれば神貫頂す。満身軽利たれば頂頭懸たり」であり、腹内鬆浄であれば気が活性化(気騰然)するし、それは左右前後に体が偏ることのない尾閭正中でもある。そうであるからまた気が活性化して背骨を頭頂まで貫く(神貫頂)のである。こうして気が活性化されると軽やかな動きが可能となる(満身軽利)。つまりこれは頭の頂きから糸で吊るされているような感じ(頭頂懸)になるわけである。