第六章 正座と四股と馬歩(11)
第六章 正座と四股と馬歩(11)
古くから中国武術の基礎鍛錬であった馬歩は中国での椅子の生活をベースとしで生まれたものであったが、これが近代になって王向斎により広く静坐的な鍛錬法として紹介された。意拳である。形意拳の奥義の鍛錬であったものが、心を養うものとして紹介されるようになったわけである。興味深いことにこれと同様なことが日本でも生じていた。岡田虎二郎による岡田式静坐法である。これはいわゆる「正座」の姿勢で瞑想をしようとするもので、坐禅に対して日本的な修養法が求められた戦前の社会的な風潮もあって考案されたものとすることができるであろう。かつて数十年前くらには電車の座席に正座をして坐っている老人をよく見かけたものである。それ程に正座は日本人の日常に溶け込んでおり、その姿勢はリラックスすることのできるものであったのである。