第六章 正座と四股と馬歩(10)
第六章 正座と四股と馬歩(10)
こうして見ると形意拳の混元トウも半身の構えも「四股」の変形であることが分かる。馬歩の形の「四股」では動くことが難しい。そこで半身の「四股」の形となる構えが考案されたのであった。これにより威力と移動性の二つを共にシステムとして形意拳は有することができるようになった。しかし、一方では半身の「四股」は「四股」としての力強さを養うことも、半身の構えとしての移動性を得ることも不充分のままとなりやすい。形意拳はうまい人はひじょうに優れているが、技量が未熟な人はなかなか実用に耐えるだけのものを身に付けられていないことが多い。形意拳は「中間」が居ない、とされるのである。それは四股をそのままに使うのではなく心を開く混元トウと、攻防に使う半身の構えという高度な応用として四股を使おうとしたために形意拳のシステムそのものが高度なものになったことによると言えるであろう。