第四章 合気道技法の「実戦性」とは何か(14)
第四章 合気道技法の「実戦性」とは何か(14)
合気道や大東流の「技」がどうして試合では極端に使えないのか。かつて「王者の座」というフィルムが撮られた。そこでは晩年の植芝盛平を紹介しているが、その中でアメリカ人と思われる巨漢に合気道の技を掛けるというシーンがある。はじめに藤平光一が掛けようとするものの、なかなか掛からないので最後には柔道の投げ技で対処している。これは植芝盛平も同様でうまく掛けることができていない。しかし、塩田剛三はロバート・ケネディの護衛官を簡単に投げたではないか、と言われるかもしれないが、それは正座から技を掛けたためである。正座などしたことのない大きな体躯のアメリカ人は座った時点で体勢が崩れてしまっている。こうした武道センスの良さが塩田にはあった。また、このことは合気道の技が本来は「座り技」であったことを証ししているともいえよう。入身投げでも、四方投げでも、座り技でこれを用いれば問題は無いが、立ち技として使おうとするとなかなか掛からない。こうした事実は合気道の技とは、実は呼吸法の応用であり、「座り技」の形をベースとするものであったたと思われるのである。