第九十三話 簡易と簡化の太極拳(9)
第九十三話 簡易と簡化の太極拳(9)
「盪」という語が出ているのは『易経』(繋辞伝)であり、
「剛柔、相い摩(ま)し、八卦、相い盪(うご)かす」
とある。つまり「剛柔」が関係をするのであるが、それは摩(こ)するような関係においてそれを持つというのである。こうした関係を「陰陽互蔵」という。剛柔はまったくの剛と柔で別にあるのではなく、剛の中に柔を含み、柔の中において剛を含むことで関係をしている。それが「陰陽互蔵」である。これを示しているのが太極双魚図の魚の体と目で、例えば魚体が黒であれば目は白で示される。魚体が白であれば目は黒となる。これは剛の魚体に柔の目が存しているということで、柔の魚体にも剛の目があることになる。またこうした状態は「綿中蔵針」と称されることもある。綿は柔で針は剛である。一般的に太極拳は柔を表とするのでこれが太極拳を練る場合の秘訣となっている。