第九十三話 簡易と簡化の太極拳(5)

第九十三話 簡易と簡化の太極拳(5)

日本で美乃美が出した『中国太極拳』には簡化を演ずる李天驥の貴重な写真がある。簡化は本来の太極拳をやさしくした「簡化」とは称しているものの太極拳としてのセオリーからは逸脱している。これについてはここでは詳述しないが、起式からいきなり野馬分ソウに入るなど通常の太極拳ではあり得ない構成になっている。これには形意拳の三体式の影響がうかがえる。また足を寄せる動作も同様であるし、トウ脚から下勢への流れは形意拳の燕形の呼吸そのものである。簡化のベースになっているのは李天驥が最も深く体得していた形意拳であるといえよう。興味深いことに『中国太極拳』で李天驥が見せている推手は形意拳の滾勁の秘伝の使い方そのものである。太極拳としては必ずしも評価の高くない簡化であるが、これを「形意拳の太極拳」としてみた場合にはおもしろい発見がある。

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