第九十三話 簡易と簡化の太極拳(4)
第九十三話 簡易と簡化の太極拳(4)
楊名時の息子の楊進は簡化太極拳を編んだ李天驥に師事して、結局は楊(名時)「家」としては正統的な簡化の伝承系譜につらなることになった。こうしたことは現時点で直接に「楊名時太極拳」と李天驥の簡化とを関連付けるものとは認識されてはいないが、おそらく百年ほども後になれば楊名時の家系は簡化の正当な継承家系ということになるのであろう。こうした時間感覚は日本人にはない中国人独特の「百年先」を見据えたものなのかもしれない。李天驥の功は相当に深いが文革の頃に炭鉱で働かされて体を悪くしたという。若いころは体格も良かったらしいので、そのまま功を深めて行くことができれば、どのような境地を開拓したであろうかと思うと残念ではある。