第九十四話 龍形八卦掌における投げ技への展開(8)
第九十四話 龍形八卦掌における投げ技への展開(8)
「四病」がなければ「中定」が得られる。「前進」は合気道などでは表とされる入身で前に進んで相手の死角に入る。「後退」は裏の入身で相手の動きを外して死角を作る。「右転」「左転」は転身をしての入身である。形意拳の連環拳では「前後」の入身までは完成していたが、「右転」「左転」の入身は十分な研究がなされていなかった。そこで八卦掌の歩法(扣、擺歩)が取り入れられることになったわけである。形意拳の創始者である李能然は師の戴龍邦から当初は連環拳の初めの幾つかの動作だけを練習させられていたとされる。これはおそらくは進歩と退歩の崩拳だけを練っていたということであろう(退歩崩拳ではなく退歩讃拳で行う場合もあるが、裏の入身を練るということでは同じである)。形意拳に高度な入身が八卦掌からもたらされるのは李能然の次の世代を待たなければならない。