第九十三話 簡易と簡化の太極拳(13)
第九十三話 簡易と簡化の太極拳(13)
「簡易」な太極拳によって知るべき太極拳の核心が「盪」であると鄭曼青は教えていた。「盪」はすでに述べたように湯で皿を洗うことから来ている字で、陰陽が摩(す)れあって関係することであった。同様にこの世も変化をしていると考えるのである。春は突然、夏になるわけではない。徐々に暑くなって夏が実感されるようになる。これは春の中に夏が含まれていることになる。ひいては冬の暖かな陽だまりには「夏」が存しているのである。こうした自然の変転の理を知るためのエクササイズが太極拳なのであるが、それが「攻防」という用途に固執し過ぎることで十分に働いていないところが生じてしまっていた。それを改めたのが簡易式なのである。