第九十三話 簡易と簡化の太極拳(12)
第九十三話 簡易と簡化の太極拳(12)
また「易」と「簡」については「繋辞伝」に次のようにもある。
「易簡にして天下の理を得る。天下の理を得て、位をその中に成す」
とある。「易簡」であるからこそ天下の理を知ることができるのであって、「中」つまり中庸で居ることができるとしている。「天下の理」とは「道(タオ)」であり「太極」である。つまり「太極」を知ろうとするのであれば、それは簡単で(簡)、分かりやすい(易)ものでなければならない。つまり108式まで増えてしまった太極拳ではすでに中庸を得ることは難しく、それを簡易にした簡易式でなければ「太極」に達することは難しいという考えが鄭曼青にあったように思われるのである。それは套路を通して直接に自分自身の「太極(小太極)」を悟ることは、つまりは森羅万象の太極(大太極)を知ることとなるということである。ここに大宇宙(大太極)と小宇宙(小太極)とはひとつのものとなり、天地と一体となることができるのである。